よみもの

クロルピクリン剤の適正かつ安全な使用に向けて

更新日: 2026/03/10
執筆者 農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課 農薬対策室 農薬指導班
2026年3月10日付日本農業新聞掲載

 土壌くん蒸剤のクロルピクリン剤は、広範囲の土壌病害虫に安定した効果を示すため、長年にわたり農業現場で活用されている。しかし、その刺激性の強いガスにより、使用時には防護装備の着用や農薬散布後の被覆が必須である。
 農林水産省が実施した調査では、同剤による事故は年間平均4件程度報告されており、その主な原因は、注入処理後の被覆の不備または未実施であることが明らかになっている。
 そこで安全に使用するための注意点を同省に解説してもらう。

使用者の中毒事故発生も

 土壌くん蒸剤は、土壌病害虫対策として農業現場で重要な役割を担っており、その中でもクロルピクリン剤は、広範囲の病原菌やセンチュウ類に安定した効果を示すため長年用いられている。一方で、刺激性のガスを発することから、使用時に防護装備を着用するほか被覆を行うなど適正使用の徹底が重要である。そこで、農林水産省は農薬の使用に伴う事故および被害の実態を把握するため調査を実施しており、同剤による事故は年間4件程度報告がある。
 主な原因は、注入処理後に被覆をしていない又は被覆をしているが不十分であることが挙げられる。
 2025年夏には施設内で同剤を使用した際に農薬使用者の中毒事故が発生しており、適正な取扱いに関する指導の一層の強化に向けて、防護装備の着用や施設内を含め処理後直ちに被覆することなどを示した「被覆を要する土壌くん蒸剤の施設内における適正な取扱いの徹底について」を通知し、指導を行ったところである。


被覆の徹底が最重要 周囲とラベル再確認を

図1


 クロルピクリン剤使用時は、農薬を使用した土壌から当該農薬が揮散することを防止するために必要な措置を講じる必要がある。事故防止に向けて最も重要なのは、注入処理後の被覆の徹底である=図1。特に周囲に住宅地などがある場合には、厚さ0.03ミリ以上の資材やガス難透過性フィルムを用いることが有用である。また、高温時の処理は避け、朝夕など気温の低い時間帯に行うことで臭気被害のリスクを低減できる。あわせて、使用時は防毒マスク(吸収缶付きのもの)、保護眼鏡、不浸透性手袋などの防護具を必ず着用し、注入処理のみならず調製・ガス抜き作業時にも同様の装備を徹底することが作業者の安全の確保につながる。
 こうした点については、これまでも行政が継続して指導を行ってきているが、これに加え、25年よりクロルピクリン工業会が主体となり、農薬販売店と連携した独自の啓発活動を展開している。使用者への啓発をさらに強化する観点から、同剤の販売時にチェックシート=図2=により購入者に対して適正使用に係る啓発を行っている。こうした民間団体による取り組みとも連携しながら、さらなる事故防止に向けて取り組んでまいりたい。

図2


 最後に、繰り返しにはなるが、農薬の事故は使用時の不注意によるものが多い。いつもどおりと過信をするのではなく、今一度初心に立ち返り、「使用前 周囲よく見てラベル見て」を徹底するようお願いする。


【農家導入事例】岩谷マテリアル ハイバリアー

執筆者 日本農業新聞メディアプロモーション部
土壌消毒に有効 サツマイモ立枯病対策で

 サツマイモ産地の悩みとなっている土壌病害、立枯病。発生すると品質や収量を低下させるため、クロルピクリン剤による土壌消毒が有効だ。大産地の茨城県JAなめがたしおさい管内で、ガスを土中に留めやすくするガスバリアー性フィルム(※)「ハイバリアー」(岩谷マテリアル)を活用し、より確実な処理で防除を進めるサツマイモ農家に取り組みのポイントを聞いた。

前田鉄夫さん(68)


 同JA甘藷(かんしょ)部会連絡会は、221人が約750ヘクタールで栽培する。年間約2万トンのサツマイモを出荷する。
 大産地だけに、立枯病に悩む圃場(ほじょう)も存在する。約6ヘクタールを栽培する同連絡会前副会長の前田鉄夫さん(68)は「自分の畑でも、猛暑で3、4年前から一部で発生が目立ってきた」と明かす。同病は高温乾燥で発生が助長される。近年はつるが茂って地面に影を作る前に暑さが来ることが増え、発病を助長する条件になりがちだ。

ハイバリアーを使い順調に生育するサツマイモ
(茨城県行方市で)


 そこで前田さんが活用するのがガスバリアー性フィルムだ。同病の発生の多い圃場では、クロルピクリン剤が特にしっかりと効くようにハイバリアーを展張する。
 県行方地域農業改良普及センターの試験では、ハイバリアーを使うと、通常の農ポリのマルチでサツマイモの7割が発病するような多発圃場でも、発病を1割程度に抑えられた。導入コストに対し、品質や収量の改善効果は大きいという。
 前田さんは効果を実感し、ここ3年ほど使い続けている。「立枯病に悩む農家に会ったときは、使ってみたらどうかと勧めている」と説明する。
 加えて、定植を早めて暑さの前に植物体を茂らせること、硫黄資材で土壌pHを下げることといった基本対策も励行。化学防除と耕種防除の両方を実践し、立枯病対策の効果を高めている。


※ガスバリアー性フィルム
特殊な層構造を持ち、土壌消毒剤の揮発性ガスが通り抜けるのを防ぐフィルム。内部の土壌消毒効果の後押しや、外部への漏れの低減などが期待できる。サツマイモの他、果菜類や葉物などの土壌消毒にも有効。


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