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変化に強い雑草たち 気候変動でより厄介に!?
いま、世界中で気候変動が進んでいます。
特に、農業は外で行われることが多いため、気候変動の影響を受けやすい産業です。例えば日本では温暖化で高品質の米ができない、ブドウが色づきにくくなるといった問題が増えています。
このように気候変動は、作物の生産にさまざまな悪影響をもたらします。
しかし、作物と競合する「雑草」は、作物と同じ植物にも関わらず気候変動が進んだ世界ではより旺盛に生育できるなど、より厄介になると言われています。
雑草は気候変動でどう変わる?
雑草は、作物と水や光、栄養を取り合うライバルです。
気候変動が進むと、雑草の中にはより勢いよく育つようになるものも出てきます。
今回は、気候変動の中でも二酸化炭素濃度と気温の上昇を取り上げます。
雑草の「光合成タイプ」で反応が違う
植物は光合成をして育ちますが、雑草にも2つのタイプがあります。
それが「C3植物」と「C4植物」です(参考文献1)。

つまり、雑草イネが侵入した水田など、C3植物の雑草が生えている農地では、二酸化炭素濃度が上がると雑草の害が特に大きくなることが懸念されます。一方、気温が高いとC4植物の雑草の害が大きくなる恐れがあります。
イヌビエの研究例
日本の稲作雑草の代表例であるイヌビエを使った研究があります。
気温が2度高く湿度が13%低い環境にしたところ、発芽しやすくなる、背が高く育った、穂が早く出て、開花期間も長くなったという結果が出ています(参考文献2)。つまり、気候変動が進むと雑草害がますます強くなり、作物にとって大きな問題になります。
気候変動で雑草害が強くなる理由は他にも
• 生育期間の長期化
• 種子量の増加
• 亜熱帯、熱帯雑草の北上
• 外来雑草の侵入
なぜ雑草は気候変動に強いのか?
次の2つの理由があります。
①遺伝的に多様なこと
同じ種でも、暑さに強い個体や寒さに強い個体がいることから、変化する環境に適応しやすいです。そのため、たまたま気候変動に強い遺伝子を持つ個体があれば、それが生き残って繁茂します。
②環境に応じて特性を変化できる(表現型可塑性)
例えば日当たりが悪ければ茎を伸ばして光を得ようとする、水が足りないと根を深く伸ばすなど、周りの環境に応じて特性を変化させることができます。そのため、さまざまなストレスにもうまく対応でき、気候変動が起きても生き残ることができるのです。
一方、作物では味や形をそろえるために、こうした性質をあえてなくすように改良してきた種も多く、気候の変化には弱いです。
まとめ
気候変動が進むと、雑草の脅威はこれまで以上に大きくなります。農業を続けていくには、雑草の振る舞いを知り、対策していくことが大切です。
参考文献
| 1. | Varanasi, A., Prasad, P. V., & Jugulam, M. (2016). Impact of climate change factors on weeds and herbicide efficacy. Advances in agronomy, 135, 107-146 |
| 2. | Peters, K., & Gerowitt, B. (2014). Important maize weeds profit in growth and reproduction from climate change conditions represented by higher temperatures and reduced humidity. Journal of Applied Botany and Food Quality, 87. |
| 3. | 伊藤幹二. (2011). 都市の気候変動と深刻化する雑草問題. 草と緑, 3, 9-20. |
<制作>日本農業新聞 メディアプロモーション部
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