よみもの
水稲の病害:適期防除支援システム開発
2026年2月18日付日本農業新聞掲載
水稲病害においては、食料安全保障の確保に向けた安定生産に加えて、必要な時のみ防除を行うことが求められる。主要病害であるイネのいもち病・紋枯病・稲こうじ病では、発生量や発生リスクを予測しながら設定した閾値(しきいち)を超えたときのみ防除を支援できるシステムが開発され、民間企業でのサービスが始まっている。そこで、これら3病害の近年の発生動向と防除支援システムについて紹介する。
いもち病
2025年は葉いもちが18.5万ヘクタール、穂いもちが18.5万ヘクタールの発生面積となり、早期水稲や標高の高い地域での発生が目立っている。注意報は長野県の葉いもちで発令された。本病の発生リスク予測システムでは、栽培期間中に出現した感染好適条件および準感染好適条件の累積値を表示し、注意や警戒を要する閾値に達した時点で、実際に発生する日より7日前から電子メールによるアラートを配信する機能を持つ。
本病は近隣に伝染源がない場合は発生しないので、メールが来たら圃場(ほじょう)で葉いもちの有無を確認し、発生が認められた時のみ薬剤を散布することができる。
紋枯病
25年の発生面積が49.7万ヘクタールとなり、全国的に発生が多い病害となっている。注意報は長崎県・宮崎県で発令された。本病の発生量予測システムでは、初発から発病株率の累積値を表示し、薬剤散布の実施が必要な閾値に達する9日前から、電子メールによるアラート情報が配信される。
本病は土壌伝染性の病害のため、近年の発病株率を畦畔(けいはん)際から調査しておき、その発病株率をシステムに登録しておくと、より精度高く予測することができる。また、薬剤を散布した場合の発病抑制効果をグラフ表示する機能も持つ。
稲こうじ病
25年の発生面積が4.2万ヘクタールとなり、近年の少雨高温により発生が減少傾向にある。本病の発生量予測システムでは、幼穂形成期から出穂期までの限られた感染期間において、株当たり病粒数の累積値が表示され、防除が必要な閾値に達した日や散布適期の開始日・終了日をメールで連絡する機能を持つ。
本病は中発生以上のリスクがある場合に利用されることが多く、転炉スラグ肥料などの土壌改良資材の土壌混和と本システムの散布適期情報の利用を組み合わせることで、開始から3年以内に薬剤防除が不要となる技術として最も普及が進んでいる。
農水省のホームページでは、総合防除実践マニュアルのイネ編において、すでに稲こうじ病のシステムの利用が記載されているが、水稲では「総合防除」という用語はまだなじみが少ない。技術要素としては、塩水選や温湯消毒などすでに実施されていることや、都道府県で策定された総合防除計画を推進することで普及が進むと期待されている。
また、これらシステムを利用することで生産者の病害虫防除作業の省力化につながることも期待され、30年までに化学農薬の使用量(人へのリスク換算)を10%削減する目標を掲げる「みどりの食料システム戦略」にも貢献すると考えられる。
病害虫や雑草に関する最新の情報を知りたい場合は、各都道府県の病害虫防除所などにお問い合わせください。
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