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[農家の特報班]高温・豪雨アンケートから(上)生産量・品質とも打撃

更新日: 2025/12/19
2025年12月11日付日本農業新聞掲載

 日本農業新聞「農家の特報班」が今年の高温・豪雨が農畜産物に与えた影響をアンケートすると、さまざまな品目で、生産・出荷量と品質の両方で大きな打撃が出ていることが分かった。調査結果をまとめ、安定生産に向けた課題を探る。

不稔、奇形、害虫にやられ…

 高温・豪雨によって今年の生産・出荷量、品質の両方が「減った」と回答した人は46人。全回答者の4割を占めた。
 生産・出荷量や品質が低下した要因として最多だったのは「高温」。宮城県の60代男性兼業農家は、自身が栽培する米「ひとめぼれ」で「不稔があり、中身が入っていない」と話す。生産・出荷量は例年と比べて2~3割程度減り、品質も1~2割程度落ち込んだ。

ミニトマトに入り込んだ虫。果実に被害も出ている(投稿者提供)

 高温そのものだけでなく「害虫」「雑草」などを減収要因に挙げる声も多い。福島県の60代女性兼業農家は「ミニトマトには青虫が入り込んで中身を食べられた。オクラにも初めて見る青虫が付いていた」と明かす。「農業に携わるようになって5年ほどになるが、ここまでの虫害は初めて」と話す。
 畜産分野でも高温の影響が顕在化している。宮崎県の50代男性兼業農家は「子牛が熱中症になり回復に時間を要した」、福島県の60代男性兼業農家も「肉豚が熱中症になった」と各地で家畜の生育が停滞していた。
 生産・出荷量が「減った」とした69人に減少の度合いを調査。最も多かったのは「1~2割程度」「2~3割程度」で、いずれも22人に上った。より大きな打撃を受けた農家も一定数いて「3~4割」は8人、「4割以上」は6人と深刻な被害が出ている。

リンゴのつる割れ部分の周辺に残るナシマルカイガラムシの被害痕(投稿者提供)

「サイズが小さく果皮も焼けてしまった」という梨「愛宕」(投稿者提供)

 生産・出荷量が「3~4割程度減った」という愛知県の60代男性果樹農家は、梨で高温障害が多発。「新高は7割近くを廃棄せざるを得なかった。愛宕も実が小さく果皮も焼けてしまって2割弱が廃棄となった」と話す。

柿の奇形果。「摘果する中で多く見つかった」という(投稿者提供)

 和歌山県の60代男性果樹農家も「柿で奇形果が多く出た」と話す。さらに残暑の影響で「色付きが遅れた」ため、等階級などの品質が例年と比べて1~2割程度低下してしまった。

竜巻被害 立ちすくむ

突然の豪雨に見舞われた定植後のブロッコリー畑(投稿者提供)

豪雨被害を受けたトウモロコシ(投稿者提供)

 突発的な豪雨も各地の農家に大きな打撃を与えた。「9月中旬に1時間に100ミリ以上の豪雨があった」という東京都の60代男性兼業農家。定植後のブロッコリー畑に雨水が貯まった状態になり、「生育が遅れている」という。

竜巻によって破損したハウス(投稿者提供)

 静岡県東部で発生した竜巻で被害を受けた40代男性野菜農家は、トマトを栽培するハウス6棟のうち1棟が破損。ビニールを張り直し、曲がった骨組みを直すためにかかった費用は約30万円。「ただでさえ資材価格が高騰している今、大きな痛手」と打ち明ける。「竜巻被害は初めて。今後どう備えたらいいか、経験がないので苦慮している」と話す。


■調査概要
 特報班のLINEで告知し、13日までの7日間、インターネット上で募集。無作為抽出の世論調査と異なり、多様な意見を聞くために調査した。40都道府県の計118人が回答。うち専業・兼業農家、農業法人従業員は101人だった。

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