よみもの
農地以外の雑草管理と農耕地への影響 ②河川敷の雑草管理
一般的に「河川敷」と聞くと、堤防と堤防に挟まれた流路脇の土地、つまり下の図でいう高水敷地のことを思い描くことだろう。しかし、法律上は川の両側の堤防部分も含む範囲が河川敷とされている。この河川敷における除草作業は、河川堤防は河川管理者(国、都道府県、市町村)、河川敷内の公園やグラウンドなどはその占用者が行うことになっており、これら以外の範囲には人の手がほとんど入っていない状況となっている。ちなみに、上記の河川管理者が管理している国内の河川(一級河川・二級河川・準用河川)の総延長は、約14万4000キロメートルで、地球を約3周半する長さになっている。

河川堤防における雑草管理の変遷
かつては河川堤防において除草剤を用いた植生管理(除草2~3回+農薬<+野焼き>/年)が行われていたが、1990年の国土交通省の事務連絡「農薬の使用に関する河川の維持管理について」の発出に伴い、堤防除草に使用している除草剤は、原則として使用を取り止めることになった。また、1992年には廃棄物処理法の改正によって野焼きも原則禁止とされた結果、1993年以降は除草(主に草刈り)3~5回/年による管理が主流となった。さらに、2011年に維持管理費の地方負担が廃止されたことにより、除草コストの大幅削減が迫られ、現在では除草は梅雨前と台風シーズン前の2回(集草は1回)という管理が主流となっている。
河川敷で問題となる雑草たち
ちなみに新しく築造された河川堤防の法面には、河川巡視・堤防点検における視認性を維持するため、一般的に草高の低いシバ(野芝)を張ることとなっているが、年2回の除草だけでは、シバの中にさまざまな雑草が容易に侵入し、多種多様な植生に変わってしまう。特に2メートル近くになるセイバンモロコシなどの背が高い植物が繁茂した場合、堤防点検時の視認性が損なわれ、堤防決壊のリスクを見逃してしまう危険性がある。また、「菜の花」と呼ばれて親しまれているセイヨウアブラナやセイヨウカラシナなどの冬生の広葉雑草が繁茂すると、夏にその太い根が腐ることで土が柔らかくなり、堤防が弱体化してしまう危険性もある。

河川堤防における雑草の繁茂は、周辺住民にとっても景観を損なうばかりではなく、花粉症の原因となったり、蚊や蜂などの衛生害虫の住処となったりするリスクもある。
河川敷に多い花粉症原因植物としては、前出のセイバンモロコシの他、ネズミムギ、カモガヤ、ハルガヤ、オニウシノケグサなど多種のイネ科雑草があり、地域によって、また河川によって、その場の条件に適した種類のイネ科雑草が発生する可能性がある。また、オオブタクサは、以前多かったブタクサと同じ北米原産のキク科の一年生草本だが、ブタクサが1メートル前後の高さだったのに対し、その高さは4メートル以上に達し、他の植物を圧倒してしまう。この大きな体から大量の花粉をまき散らし、秋の花粉症の原因植物の一つとなっている。

問題解決への取り組み
このような問題点への対応として、近年、刈り取り回数増加の取り組みや、遠隔式除草機・除草剤散布ロボットなどの活用、また堤防部分に限るが、2024年に国交省が策定した「植物成長調節剤・除草剤のガイドライン」に基づく、除草剤や抑草剤(草を枯らさずに草丈の伸びを抑える薬剤)の利用技術の検討(試行)も行われ始めている。
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この記事を書いた人
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公益財団法人日本植物調節剤研究協会 常務理事。日本雑草学会代議員。長年、除草剤や抑草剤を含む植物成長調整剤の研究開発と農薬登録に関する業務に従事。関心のあるテーマは、外来雑草、農薬の環境影響、非農耕地における雑草対策など。



