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[農家の特報班]高温・豪雨アンケートから(下)新たな対策導入は半数

更新日: 2025/12/19
2025年12月12日付日本農業新聞掲載

 高温・豪雨が農畜産物に与えた影響を探った日本農業新聞「農家の特報班」のアンケートで、「新たな高温対策を取り入れた」との回答は全体の半数だった。対策に「効果があった」との回答も半数だった。各種対策は一定に効果を上げる半面、かつてない高温下で効果が得にくくなっていると感じる農家も多い。

効果の実感意見割れる

 回答者118人中、「新たな対策を導入した」との回答は59人。対策に「効果があった」は計30人だった。一方、「効果はわずか」は21人、「全くなし」は8人と一定数いた。

遮光シートを設置したハウスの内部

 神奈川県の60代男性野菜農家は、トマトなどを栽培するハウスの遮光対策として「これまで屋根に遮熱剤を塗っていたが、遮光シートに切り換えた」と話す。「1人でも1棟30分くらいで被覆でき、作業効率も良い」と話す。日焼け果の軽減などに「顕著な効果」があったという。

トマトなどを栽培するハウスに設置した遮光シート。「被覆作業も効率的に進められる」という(投稿者提供)

 一方、愛知県でトマト20アールを栽培する30代男性野菜農家は、暑さ対策用の液肥を「いろいろ使ってみた」と話すも思うような効果は得られず生産・出荷量は例年と比べて1~2割程度減った。「暑すぎて液肥だけでは対応できない」と感じる。
 着果の確保へ植物成長調整剤も使ったが「一部は着果しなかった」。来年は定植時期を遅らせるなどの対応を検討。「需要期の夏に出荷できないが、やむを得ない」と話す。

「心白米に格付けされた」という玄米(投稿者提供)

 水稲は水管理の効果を巡って回答が割れた。広島県の70代女性水稲農家は例年、早朝から日中に入水していたが今年は「より冷たい水にするため夜に水を入れた」。ただ「心白米が多く、格付けが落ちた」として「効果はわずか」と話す。収穫期の稲穂は「白っぽかった」といい「年々、米作りが難しくなっている」と話す。

収穫期の稲穂。高温の影響もあり「白っぽい」という(投稿者提供)

 山梨県の70代男性水稲農家は「水田のかけ流し」を徹底。一部は稲が徒長して倒伏するも「倒伏しない圃場もあり、一定に効果はあった」と実感する。

植物成長調整剤を使うも着果しなかっというトマト(投稿者提供)

 新たな対策に、バイオスティミュラント(BS)資材を挙げる農家も複数いた。千葉県の30代男性水稲農家は生産・出荷量が例年よりも「やや増えた」として、「一定に効果があった」と受け止める。

カルシウム剤を散布したミカンの木。日焼け果は抑えられたという(投稿者提供)

 一方、同様に水稲でBS資材を使った佐賀県の30代公務員は「等級の結果がまだ出ていない」としつつ、「効果はあまり判然としなかった。次年度以降も確認したい」と話す。

開発から普及 迅速化を

九州大学大学院・広田知良教授

 高温は作物へのダメージだけではなく、害虫被害や干ばつなども生み出す。海面水温の上昇などを考慮すると、今の気温が下がる可能性は低い。有効な対策の開発から普及までのスピードを上げることが重要だ。  
 今回の調査で、新たに対策を講じた人が半数を超えなかったのは複数の課題があると思われる。異常気象は一過性だと思って対策をしなかったり、コストがかかり導入をためらったりしたことも背景にあると考えられる。現場では、高温や豪雨は毎年発生すると考え対策する必要がある。
 対策を導入しても、目立った効果を実感していない人が半数近くいた。この背景として、高温が進む現状に技術開発が追いついていないことが挙げられる。研究機関が現場の農家との共同実証を増やすなどして、開発から普及までの期間を短縮していくべきだ。

(高内杏奈、柘植昌行が担当しました)

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