病害虫メモ
スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)
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最大で殻高3センチ程度まで成長する
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名前 | スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ) |
分布 | 九州、近畿、中国、東海、関東 |
対象作物 | 水稲・(レンコン) |
防除方法 | 冬期の圃場の耕うん、移植時期の薬剤散布・浅水管理、用水路からの貝の侵入防止 |
効果のある薬剤 | ジャンボタニシ防除剤 スクミンベイト3 憐酸第二鉄粒剤、モスピラン 顆粒水溶剤、国産石炭窒素 |
その他 | 暖冬の翌春に多発傾向 |
もっと詳しく
病害虫防除支援技術グループ 上級研究員 松倉啓一郎
発生動向
スクミリンゴガイは淡水に生息する巻貝で、移植直後の若い稲やレンコンの芽を食害する。1981年に南米から日本に持ち込まれ、その後、九州の水田に被害をもたらした。2000年代になり暖冬の年が頻発すると、水田で越冬する貝の数が増えて被害がさらに深刻となっている。また、近年の暖冬は新たな地域への侵入も助長し、現在では瀬戸内海沿岸部や関西から関東にかけての太平洋沿岸部で被害が目立ち始めている他、北陸の一部地域でも生息が確認されている。この貝は水中に生息するため、同一の水系内であれば自然に分布を広げていく。また、地理的に離れた場所であっても、貝の発生圃場(ほじょう)で使用した農機具に付着した泥などと一緒に他の地域に拡散する場合もある。
防除対策
スクミリンゴガイの発生が目立つ地域では、前年の収穫が終わる秋から翌年の被害防止に向けた防除に取り組む。収穫後に再度圃場を湛水(たんすい)できる場合は、石灰窒素を散布すると貝を駆除できる。また、厳冬期に圃場を耕うんすることで、水田内で越冬している貝をロータリーの刃で物理的に破砕する他、土中から掘り起こされた貝を冬の寒気で殺す効果も期待できる。
水稲収穫後の圃場の耕うんは、ニカメイガやヒメトビウンカなどの他の害虫の防除にも効果がある。
水稲の移植時期には専用薬剤の散布と浅水管理が推奨される。移植時期前後に散布できる専用薬剤は3種類あり、貝を誘引して効果的に駆除できるものや多雨時であっても効果が持続するもの、天然物由来の有効成分の利用により有機JAS規格に適合したものなど、種類ごとに異なる特徴がある。
浅水管理は、この貝が水深の浅い場所ではほとんど苗を食害できない性質を利用した防除方法である。水田内をなるべく均平にした上で、移植後の約2週間、水田内を水深4㌢以下に維持することで被害を抑えることができる。
前年の秋に石灰窒素を散布していない場合は移植前に石灰窒素を散布することも可能であるが、水稲への薬害の防止や施肥量の調整が必要となるため、実施する際には注意が必要である。